脱会とは

滝本弁護士のブログのロングインタビューから、脱会に関して、私の関心のあったものを抜粋。
第二、第三の破壊的カルトの強烈に破壊的な事件を生み出さないために、まず考えることからはじめてみる。

オウム事件の本質で一番こわいところは、いい人達がとんでもないことをやったということ。救済のためにサリンを撒くまでした、坂本一家も殺した、滝本・私も殺そうとしたというところが恐ろしいんで、「悪意の殺人は限度があるけど、善意の殺人は限度がない」、そこが一番の恐い本質ですね。」

「一番大きいのは、なぜそれだけいい人達が、救済のために悪いことをやったのか、そのシステム・機序・マインドコントロール・洗脳というのが問題なのであって、彼がいい人なのに、そして現世と交わってきたのに、どうしてやめないのかとか、社会とギャップがあるのが不思議だと言われることが、私はむしろ不思議なの。」

現実感覚のなさが一番の恐さだろうと思います。現世は幻だという。現世でつらいことがあっても、「他の苦しみを自己の苦しみとする」と言ってみたって、他の苦しみを痛みとして感じられない。」

「脱会の一番多いパターンは、実はカウンセリングとか強制捜査よりも恋愛なんですよ。オウムの中で誰かを好きになっちゃった。男女関係は完全に禁止でしたからね。一番上になれば別だろうけど。中で好きになっちゃったり、それから外で働いている間に好きな人ができたりということで、恋愛になって現実感覚を戻して、それでやめる人が実際には一番多い。」

「失礼な話だといいながらも、よく言うんだけど、オウムに20歳で入信し出家して5年経ったら25歳ですね。25歳でも精神年齢は20歳のままだなんてよく言うんですが、私は違うと思う。15歳だと思う。精神年齢は下がるよと言ってるわけ。
オウムというひとつの完璧な部分社会にはまってしまっていて、それ以外のイデオロギーや情報を遮断していたわけです。彼は情報としては入れていたけれども、それがとんと入らない。麻原さんの指示なら、全て何でもするというのがオウムですからね。身口意全部を捧げるわけだから、それをして来た状況ですから、社会のことは知らない。社会で仕事しててもよ。社会とある程度接触持ってても。だから・・・幼いですよね。ネクタイができるできない云々だけの問題じゃなくて、彼はネクタイは元々できたでしょ?多分つけられる。だけれど、「社会の常識はオウムの非常識、オウムの常識は社会の非常識」なんて言い方をするけれど、要するに社会の仕組みを知らない。本当の仕組みね。本音と建て前とか。あと、逆に社会の厳しさを知らない・・・ところはあるね。
(中略)
でもそれが数年間、本当に社会復帰していく中で、すごく素敵な大人になるから、それが一番の楽しみですけどね。」

「社会が厳しいと言うけどあまいよと。日本の社会は優しいよと。私は日本を誇りますよ。アメリカの記者とかテレビ局とかフランスとかから取材を受けて、「なぜまだ教団は潰れないんですか」「なぜ破防法を使わなかったのか」と、それは日本が宗教の扱いを知っているからだと。日本では、比叡山焼き討ちを信長がやった。これは1571年だと。キリスト教の弾圧もやった、ですが今は宗教の扱いを知っている。そこから説明して日本を自慢しますよ。
要するに、オウムというものを本当に潰すには力だけじゃだめなんだということを知ってるという意味です。」

「これ、忘れてはいけないんで。95年11月にサリン70tを本当に撒こうとしていたんだから。麻原は日本国を乗っ取ろうとしてたと一方で言うことがあるけど、その前に全て破壊しようとしてたんです。強烈な・・・すごいことですよ。」

「オウムの信者を理解するけど、決して許さないぞという態度が絶対必要なんです。で、上祐は、オウムを生き残らせるために工夫している、上祐路線の元に社会の人に許してもらおうと考えているわけです。麻原の教えを使ったまま、ヴァジラヤーナは隠したまま、いつでも封印を解ける状態でね。それに括弧書きの知識人とか括弧書きの人権派が乗っちゃうわけだ。それを決して許さないぞという態度が極めて大事なのだろうと思う。上祐こそ「嘘をつく」のがワークなのだということを忘れては困る。
で、もちろん厳しく言って事件が解決するわけではない。だから私も厳しく言わないけど、許さないぞという態度を忘れたならもう終わり。でも、「許さないぞ」という態度を忘れているように感じられる発言が時々あるわけだ。仏教の課題として一般化する議論をしたり、社会論一般にしたりね。
彼も含めて、オウムはサリンを作り、サリン以外も作っているわけですよ。VXも作り、いろいろやってきた。LSDもやってきた。内部では大勢の人が殺された。実に大勢の人が。記憶喪失にさせられたのは100人からいる。そういうおぞましいところにいたことの責任、それに関与したことの責任。だって本来、全員出家者は向精神薬の犯罪で捕まるべき人達なのよ。そこまでやり切れないからやらなかっただけの話でして。それをあたかも許されるがごとく、個人個人の問題、社会一般の問題に還元してしまって、誤解を与えてしまっては非常にいけない。で、そういう人が多いの。」

「いろんな人と会いましたけど、みんないいヤツなんだよ。参っちゃうよねぇ。林泰男なんていうのは、8人彼の撒いたサリンで死んでるわけだ。で、少し悪いヤツであって欲しかったんだけど、会ってみてやっぱりいいヤツなんでショックでしたねぇ。1審判決の判決文の中では「およそ師を誤るほど不幸なことはなく、その意味において被告人もまた不幸かつ不運であった」というようなことが書いてあるんだよ。死刑判決なのに信じられない前代未聞の文脈なんです。裁判所もよくわかってくれたんだなぁと思う。それがオウム事件の一番の恐ろしさ。」

「ともかくマスメディアも、NHKだって幾つかの新聞社も、それから他のテレビ局にもオウムの信者は何人もいたんだから。」

(マインドコントロールを解くためには、自分の取った行動をひとつひとつ噛み砕いていくことが大切なのですか。、という問いに対して)
「うん、だから彼はあなたと話すでも何でもいいから、いろんなことをそれこそ振り返りながら、何年何月頃何をやってた、何年何月頃何をやってきた、それを全部聞くだけだっていろいろな話が出てくるし。その中で麻原さんとあったこと、上祐とあったこと、いろいろ話をしていく中で解かれていく。」

日本は原爆2回落とされてサリンを2回やられた国になっちゃったんですよ。こんなの世界で初めて

(脱会しようと思っても、教団の中の方が居心地がいいからということもあるでしょうね。、という問いに対して)
「うん。脱会しようという人はいない。そろそろ脱会かなぁというイメージだけどね。だから中堅幹部以上の人は居心地がいいでしょ。中にいれば尊敬してくれるし、外に出れば、地位と社会的評価は逆転するわけだから。それが中にいるとわからない。それがわかってくればより恐怖になるし、わからないまま一応離れた場合は、社会でも自分はラージャ・ヨーガ成就、クンダリーヨーガ成就してるから能力あるし尊敬されるはずだなんて思ってやめる人が中にはいるけど、こういう人は戻りやすい。
(中略)
だから、ある意味で「こっちの水はあ〜まいよ♪」じゃないけど、本当に脱会すれば社会は受け入れるよという態度を示し続けなければいけないのかもしれない。その代わり、本当に脱会していない人にあまいことを言う必要はないわけですよ。」

「組織から離れればそれでいいようなあまい考えはいかん。」

社会への強烈な恨みルサンチマン、権力を持ちたい・人を支配したい、それも果たされないときの強烈な破壊願望タナトス、それは決して許さないんだという態度をしていかなければオウム真理教というもの、麻原を観想する人はただの一人も許さないんだと、国家じゃなくて社会に於いてそういう態度でいて欲しいのね。そうじゃなきゃオウムはなくならないですよ。」

※太字、赤字は私の脚色です。

「脱会とは」
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